災害現場でのドローン飛行:参考情報(航空法132条の92の適用申請)

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災害現場でのドローン飛行:参考情報(航空法132条の92の適用申請)

2024.05.31

能登半島地震直後の初動対応:日本DMCが無人航空機で現地調査

 

令和6年1月18日午後2時、静岡県を出発し、翌日の午前11時半頃に輪島市役所に到着しました。到着後すぐに、関係者の皆さんと合流し、調査対象箇所について説明を受けました。その後、直ちに現地調査(ロケハン)に向かいました。

 現地では陸上自衛隊のヘリコプターが活発に活動しており、飛行の危険性を感じながらも現地調査の情報をもとに翌日の飛行準備を開始。航空法132条の92の適用申請を作成、関西航空事務所へメールで提出。承諾の連絡が届いたのは深夜でした。
翌日、輪島市立体育館と輪島市輪島野球場のドローンを用いた調査を実施しました。この調査は、被災者が安心して休める場所を確保するための施設や周辺の安全性を確認する目的で行われました。ドローンから撮影した写真により、これらの施設が避難所として利用不可能な状態であることが明らかになりました。

 さらに、自動飛行による簡易な写真点群測量を行い、三次元点群データを作成しました。このデータから、雨や余震により土砂崩れ等の二次災害が発生する可能性があることがわかりました。非常に有益な情報を提供することができたと実感しています。この情報を基に、避難所設置のための新たな候補地の選定や、避難経路の確保といった具体的な対策が講じられました。1月20日からは、珠洲市内の5か所の保育園やその他の公共施設の現状調査も実施しました。これらの施設についてもドローンを用いた詳細な調査を行い、被災状況を把握しました。

 今回の災害対応では、緊急用務空域での飛行が必要となり、航空法の132条の92に基づいて国土交通省の管轄事務所関西航空事務所に適用申請を行いました。申請後、ノータム番号が発行され、正式に飛行が可能となりました。さらに、飛行前には陸上自衛隊の空域管制担当者に連絡し、「ドローンによる調査を開始する」と伝えた上で飛行を行い、飛行後も調査完了の報告を行いました。災害現場では救助ヘリが低空飛行で接近することが多いため、安全な高度まで退避する判断や操縦技術が必要でした。また、操縦補助員が周囲の状況を確認し、リアルタイムで操縦者と情報を共有する態勢が不可欠であると強く感じました。特に混乱が予想される災害現場では、迅速かつ正確な情報共有が求められるため、コミュニケーションの重要性を再認識しました。

 自然災害への対応準備が急がれる中、ドローンを用いた初動調査や物資輸送が一層期待されますが、有人機と無人航空機(ドローン)の空域調整が円滑におこなわれるのに課題が残ります。この問題を解決するためには、各地域の関係機関との連携を強化し、明確なガイドラインを策定する必要があると考察します。これらの経験を踏まえ、同様の状況で無人航空機を飛行させる皆さんへ参考情報としてとらえて頂ければ幸いです。安全で安心なエアモビリティサービスが未来の社会へ広がっていくことを心から願っています。

 


 

事前調査
1. 机上調査

1-1. 地理院地図
飛行する地域の地形や地理的特徴を把握するために地理院地図を参考にしました。
これにより、飛行ルートの計画や危険区域の特定をしました。

1-2. フライトソフト
フライトソフトを使用して事前に飛行ルートをシミュレーションしました。
これにより、緊急時の着陸地点の計画をたてました。

1-3. Windy(気象情報)
気象の変化や風速について予測しました。

1-4. AirdateUAV(ドローン用アプリ)
飛行の危険度を把握しました。

1-5. 航空法第132条の92の適用申請の作成

a 飛行目的
被災現場及び二次災害が想定される範囲の、調査、記録、測量
b 飛行範囲(所在地、緯度経度による飛行範囲)
石川県輪島市稲舟町歌波周辺

c 最大の飛行高度(地上高及び海抜高)
地上高 9.0m 海抜高 109m
d 飛行日時
令和6年1月18日~令和6年1月25日までの期間
日の出から日没までの時間
(予定時刻 8:00~16:00)
e 機体数
5機
f 機体諸元
回転翼航空機(マルチローター)以下省略
g 飛行の主体者の連絡先
日本DMC株式会社 ****
***-****-****
h 飛行の依頼元
輪島市役所
東空運航第******号
許可及び承認事項
航空法第132条第1項第2号
航空法第132条の2第1項第6号及び第7号
飛行の経路
日本全国(飛行マニュアルに基づき地上及び水上の人及び物件の安全が確保された場所に限る)
東空運航第******号
許可及び承認事項
航空法第132条の86第2項第2号及び第3号
飛行の経路
日本全国(飛行マニュアルに基づき地上及び水上の人及び物件の安全が確保された場所に限る)

1-6.DIPS2.0 の登録
① 飛行計画の参照(飛行計画の範囲で他の無人航空機の飛行が計画されていなか)
② 飛行計画の登録

出展 国土交通省航空局 DIPS2.0

 

2. 現地調査(飛行当日)

2-1. 飛行範囲の地上確認
地上緩衝区域の確認:飛行に障害になるような電柱及び電線、携帯基地局や目的が不明なアンテナ等の有無、地形の変化や第三者の人や物件、机上調査との違いを確認。
2-2. 人や車の通行状況の確認
飛行区域内や離着ポイントの人や車の通行状況を 20 分程度観察した。
2-3. 被災者住居に対するドローン調査の説明
被災者に対し、ドローンを使用する目的や方法を事前に説明し、理解と協力を得た。
(離着陸場所の近隣の方)
2-4. 離着陸場所の二次災害の危険性の確認
ドローンの離着陸場所が安全であることを確認し、二次災害のリスクがないかチェックした。

 

3. 飛行

3-1. 飛行前点検
ドローン本体、バッテリー、プロペラ、カメラ、ソフトウェアの更新などすべてのシステムの状態が問題ないことを確認。
3-2. 飛行連絡
陸上自衛隊へ飛行を開始する連絡:携帯電話により連絡、繋がったため、今から飛行する事を伝えました。」
周辺の空域で救助活動用のヘリが飛行していた為、一時待機、音がしなくなった事を確認し飛行を開始。
3-3. 飛行点検
ドローンをゆっくりと上昇させ、計画飛行高度まで到達。この過程で風の影響やヘリポートが近くにないか、周囲の状況を確認。
3-4. 飛行中
ドローンの飛行航路を目視で確認し、障害物や予期せぬ状況に対応できるよう手動操縦で調査。
救助活動中のヘリコプターが接近していないか音を頼りに確認し、常に飛行を中断する準備をした。
3-5. 飛行終了
装備の片付け
ドローンや関連機材を片付け、破損や紛失、汚れが無い事を確認。
撮影した映像や写真、飛行ログなどのデータを確認し、必要な情報が正確に取得できているかをチェック。
3-6. 最終報告
飛行の結果を陸上自衛隊に報告。

 

※災害時に各行政機関でD-NETを活用する準備が急務

災害対応の効率化を図るため、各行政機関においてD-NET(災害情報ネットワーク)の活用準備が急務となっています。D-NETは、リアルタイムで災害情報を共有し、迅速な意思決定と協力を促進するシステムです。このシステムを活用することで、被災地への支援活動がより効果的に行われることが期待されます。従って、各機関はD-NETの導入と運用体制の整備を早急に進める必要があります。

D-NETとは・・・

防災・小型機運航技術-「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」は、災害時に救援航空機と対策本部等の間で必要な情報を共有化し、最適な運航管理を行うことにより、救援ミッション遂行時の無駄時間や救援機同士の異常接近を減らすこと等によって、効率性と安全性を向上することを目的としているシステムです。

出展:JAXA航空技術部門

 


備考:災害時の運航体制確保についての注意点

 災害時に無人航空機(ドローン)を使用して作業を行う際には、一般的な保険では操縦者や第三者の安全がカバーされないことがあります。ドローンによる災害支援を考えている方は、事前に保険内容を必ず確認する必要があります。

また、企業には次のような規則と義務があります。

安全規則

1.危険な状況の作業
災害支援活動は通常の業務とは異なり、危険が伴うことが多いです。

2. 従業員の安全確保
労働安全衛生法規や労働基準法に基づき、企業は従業員の安全を確保する義務があります。
災害支援活動に従事する社員については、事前にリスクを評価し、適切な安全対策を講じる必要があります。

保険契約の確認

現行の保険契約では、災害時の支援活動や高リスクな状況がカバーされていない場合があります。そのため、このような状況では企業が社員の安全を保証する責任を負います。

行政団体との調整

行政団体から災害支援の要請があった場合、事前に以下を確認・調整することを推奨します。

万が一の事故や二次災害が発生した場合の責任の所在
双方の責任範囲の確認と明確化

これにより、災害時の運航体制を確実にし、従業員の安全と業務の円滑な遂行が可能になると考えます。

                 

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